
イベント協賛メニューの作り方|スポンサーに届く提案の組み立て
「今回、協賛も集めてほしい」。企画会議のあと、そう言われて手が止まったことはないでしょうか。
会場も演出も進行も、段取りなら組める。でも「協賛」となると、何をいくらで売ればいいのか、そもそも企業が何にお金を出してくれるのかが見えない。とりあえずロゴを載せる場所を数えて、100万円・50万円・30万円と並べてみたものの、これで本当に決まるのか自信がない——そのもやもや、多くのディレクターが一度は通る場所です。
協賛メニューは、営業のセンスで作るものではありません。企業が「これは自社の目的に効く」と判断できる材料を、金額ごとに整理した一枚の商品表です。段取りを組むのが得意なあなたなら、同じやり方で組み立てられます。
結論:協賛メニューを作るときは、次の3つの順番で考えます。① 相手(企業)の目的から逆算する——認知を広げたいのか、見込み客と話したいのか、地域との関係を作りたいのかで、刺さる提供物はまったく違う。② 提供物を「露出」「接点」「権利」の3種類に分けて棚卸しする——ロゴ掲出だけでなく、ブース出展や商品サンプリング、来場者データの報告なども立派な商品になる。③ 金額の階層は3つ前後、口数の上限を先に決める——数を絞るほど、上位メニューの価値が守られる。まずは、いまの企画書を見ながら「この企画で企業に渡せるものは何か」を書き出すところから始めれば十分です。
協賛集めは、頭を下げてお金をもらう仕事ではありません。企業が抱えている課題と、あなたのイベントが持っている場を、交換条件として結び直す仕事です。そう考えると、少し肩の力が抜けるはずです。
なぜ「金額とロゴの一覧」だけでは決まりにくいのか
よくある協賛メニューは、こんな形をしています。
- ゴールド 100万円:ポスター・チラシ・公式サイトにロゴ掲出
- シルバー 50万円:公式サイトにロゴ掲出
- ブロンズ 30万円:公式サイトに社名掲載
間違ってはいません。実際、この形で決まる案件もあります。ただ、これを受け取った企業の担当者の側に立つと、社内で稟議を通すための材料が足りないのです。
企業の担当者も、社内で説明を求められます。「その100万円で、うちは何を得られるのか」「効果はどう測るのか」。ロゴ掲出だけの一覧では、その問いに答える材料が入っていません。だから決裁が止まり、「今年は予算がなくて」という返事になりやすい。
協賛が決まらないのは、あなたの頼み方が弱いからではありません。相手が社内を通すための材料が、メニューにまだ載っていないだけです。ここは、こちらで足せる部分です。
まず「相手の目的」から逆算する
協賛メニューを作る前に、一度だけ考えたいことがあります。この企業は、何のためにお金を出すのか。目的はだいたい次のどれかに分かれます。
- 認知を広げたい:新商品・新サービスを知ってほしい。効くのは、来場者数・メディア露出・SNS拡散といった「届く人数」の材料。
- 見込み客と直接話したい:BtoB企業に多い。効くのは、ブース出展・名刺交換・セミナー登壇枠など「会って話せる接点」。
- 商品を試してほしい:飲料・食品・日用品など。効くのは、サンプリング・試食試飲・体験ブースといった「手に取ってもらう場」。
- 地域や業界との関係を作りたい:地元企業・インフラ系に多い。効くのは、主催者・自治体との並びや、地域貢献としての見え方。
- 社員に見せたい/採用に使いたい:意外と多い動機です。効くのは、社員招待枠や当日の記録写真の二次利用許諾。
同じ50万円でも、認知が目的の企業には「駅貼りポスターへのロゴ」が効き、見込み客が目的の企業には「ブース1区画」のほうがはるかに価値があります。メニューを作る前に、声をかける候補企業を5〜10社ざっと書き出し、それぞれの目的に当たりをつけておくと、あとの設計がぶれません。
候補企業は、主催者の取引先、過去の同種イベントの協賛社、会場周辺の企業、出演者・出展者の関連先あたりから探すと現実的です。いきなり大手を狙わず、関係のある会社から並べるほうが、結果的に早く決まります。
提供物を「露出・接点・権利」の3つに棚卸しする
目的の当たりがついたら、次は自分のイベントが企業に渡せるものを洗い出します。ここが協賛メニューの原材料です。3つに分けて書き出すと、抜けが減ります。
① 露出(見てもらう)
- ポスター・チラシ・パンフレットへのロゴ/社名掲出
- 公式サイト・特設サイトへのロゴ掲出とリンク
- 会場内のバナー・懸垂幕・ステージ背景への掲出
- 公式SNSでの紹介投稿、MCによる社名アナウンス
- プレスリリース内での協賛社名記載
② 接点(会って話す・体験してもらう)
- ブース・出展区画の提供(区画サイズで階層をつけられる)
- サンプリング、試食試飲、体験コーナーの設置
- ステージでのセミナー枠・トークセッション枠
- 来場者ノベルティ袋への同梱(チラシ・サンプル)
- 表彰式でのプレゼンター、開会挨拶などの登壇機会
③ 権利・データ(あとで使える)
- 「◯◯イベント 協賛社」としての名称使用権(期間・範囲を明記する)
- 当日の記録写真・動画の二次利用許諾(自社サイト・採用資料など)
- 来場者数・属性・アンケート結果の実施報告(個人が特定されない形での集計データ)
- 招待チケット枠(取引先や社員の招待に使われます)
書き出してみると、思ったより渡せるものがあるはずです。とくに②接点と③権利は、金額をつけやすいのに見落とされがちなところ。ロゴ掲出だけの一覧に、ブース1区画と実施報告書を足すだけで、提案の説得力はかなり変わります。
なお、来場者のアンケート結果などを協賛社に提供する場合は、個人が特定できない集計値にとどめ、アンケート用紙や申込フォームの時点で「集計結果を協賛企業に提供することがある」旨を明記しておきましょう。ここは後から取り返しがつかない部分なので、設計段階で決めておくと安心です。
金額の階層と口数を決める
棚卸しができたら、いよいよ値付けです。コツは3つあります。

コツ1:階層は3つ前後に絞る。 5段階、6段階と細かく作ると、企業側は選べません。特別協賛/協賛/協力のような3段階が扱いやすく、必要なら「ブース協賛」「物品協賛(現物提供)」を横に置く程度で足ります。名称は、主催者の性格に合わせて決めてください(企業名を冠する「冠協賛」を最上位に置く形もあります)。
コツ2:上から作って、下へ削る。 最上位のメニューに「渡せるものを全部」載せてから、下の階層で一つずつ外していくと、階層の差がはっきりします。逆に下から積むと、上位の特別感が出ません。上位だけの特典(ステージ登壇、冠称号、ブース最前列など)を1つ以上残しておくのがポイントです。
コツ3:口数の上限を先に決める。 「特別協賛は1社限定」「協賛は5社まで」のように上限を明記します。数を絞ることが、そのまま価値になります。同時に、口数 × 単価が、収支計画で見込んだ協賛収入に届くかを必ず計算してください。ここが合っていないと、全部売れても目標に届かない、という事態になります。
金額の根拠は、「掲出面がいくつあるか」ではなく、その企業が得られるもの(届く人数・話せる件数・使える権利)で説明できる形にしておきます。相場が分からないときは、主催者や過去案件の実績、同規模・同ジャンルのイベントが公開している協賛要項を参考にすると、極端に外れにくくなります。
提案書は「相手の目的」から書き出す
メニューができたら、提案書に落とします。順番が大事です。
- このイベントは何か(開催日・会場・来場見込み・ターゲット像を1ページで)
- 御社にとって、どんな場になりそうか(相手の目的に合わせて書き換える1ページ)
- 協賛メニューと金額(階層表。口数と締切も明記)
- 効果の測り方と実施後の報告内容(何を、いつまでに報告するか)
- 申込方法・スケジュール・担当者連絡先
見落とされがちなのが4番です。「実施後2週間以内に、来場者数・属性・アンケート結果・ロゴ掲出箇所の写真をまとめた報告書をお渡しします」と書いてあるだけで、企業の担当者は社内で通しやすくなります。協賛は、出してもらって終わりではなく、報告して初めて一巡する。ここまでメニューに含めておきましょう。
そして2番は、必ず送り先ごとに書き換えること。全社共通の提案書を一斉に送るより、5社に個別に書いたほうが決まります。時間はかかりますが、いちばん効きます。
数字を書くときは、確定していないものを断定しないでください。前回実績なら「前回来場者数」、今回の見込みなら「見込み」と、はっきり書き分けます。過大な見込みで取った協賛は、実施後の報告で必ず苦しくなります。
申込から入金まで、決めておくこと
協賛が決まったあとの事務も、先に決めておくと当日が楽になります。
- 申込書・協賛契約書:協賛金額、提供内容(露出箇所・区画・権利の範囲)、支払期日、中止・延期時の取り扱いを書面にします。とくに中止時に協賛金を返還するのか、翌年に振り替えるのかは、揉めやすいので必ず明記を。
- 入稿の締切:ロゴデータ(背景透過のもの)、社名の正式表記、ブース什器の要否などを、印刷物の入稿スケジュールから逆算して依頼します。締切を過ぎたぶんは掲出できない旨も先に伝えておくと、あとで気まずくなりません。
- 請求と税区分:ロゴ掲出やブース提供など、協賛金に対して具体的な提供物(対価)がある場合は、一般に消費税の課税取引として扱われます。見返りのない純粋な寄付との扱いの違いもあるため、請求書の書き方や区分は主催者の経理・顧問税理士に確認しておくと安心です。
- 当日の受け入れ:協賛社が来場する場合の受付方法、案内担当、席の確保。ここを決めずに当日を迎えると、進行卓が対応に取られます。
協賛メニュー設計 チェックリスト
作りながら、または主催者に見せる前に確認したいことを並べます。全部を一度にやる必要はありません。忙しいときは「まずここだけ」の2つで十分です。
まずここだけ(この2つは必須)
- 声をかける候補企業を数社書き出し、それぞれの目的(認知/接点/体験/地域/採用)に当たりをつけたか
- 提供物を露出・接点・権利の3つに分けて棚卸ししたか
余裕があれば確認
- 階層は3つ前後に絞れているか(細かすぎないか)
- 最上位にだけある特別な特典を1つ以上残したか
- 各階層の口数の上限を決め、明記したか
- 口数 × 単価が、収支計画の協賛収入目標に届くかを計算したか
- 提案書に実施後の報告内容と時期を書いたか
- 送り先ごとに、相手の目的に合わせたページを書き換えたか
- 来場者データを提供する場合、個人が特定されない集計にとどめ、アンケート側にも記載したか
- 申込書・契約書に、中止・延期時の取り扱いを明記したか
- ロゴ・社名表記の入稿締切を、印刷スケジュールから逆算して伝えたか
- 請求書の税区分を、主催者の経理に確認したか
一度に全部そろわなくて大丈夫です。「まずここだけ」の"相手の目的を書き出す"と"提供物を3つに分けて棚卸しする"を押さえるだけで、メニューの形はぐっと具体的になります。
よければ、こちらも
協賛は、収支・集客・報告とひと続きです。あわせて見ると、「集める」から「返す」までがつながります。
- 収入として組み込む:イベント収支計画の作り方
- 提案書の型を整える:提案が通る企画書の構成
- 目標を数字にする:イベントの集客計画とKPI設計
- 報告で一巡させる:実施報告書(レポート)の作り方
- データを集める側:来場者アンケートの設計と集計

協賛が決まらない時期は、正直しんどいものです。断られるたびに、自分のイベントの価値を否定された気がしてくる。でも、断りの多くは企業側の予算期や方針の問題で、あなたの企画の否定ではありません。
相手の目的から逆算して、渡せるものを並べ直す。それだけで、同じ企画が別の顔を見せることがあります。今日、候補企業を5社書き出せたなら、協賛集めはもう動き始めています。