開場前のイベント会場の入口付近で、腕章を付けたテレビクルーを迎え、会場図面を見せながら撮影できる場所を案内しているイベント制作ディレクター

イベントのプレス・取材対応|取材動線と撮影ルールの決め方

「明日、地元のテレビ局が取材に来るそうです。よろしくお願いします」。

主催者さんから、前日の夕方にそんな連絡が来たことはありませんか。うれしい知らせのはずなのに、頭に浮かぶのは「どこで受け付ける?」「どこまで撮ってもらっていい?」「誰が付いて回る?」という問いばかり。香盤表にも配置表にも、取材のことはまだ一行も書いていない——。

それは段取りが甘いのではなく、取材は「主催者の広報ごと」で、制作の工程表に載りにくいからです。でも当日、カメラが会場を動き回るのは制作ディレクターが組んだ現場の中。少しだけ準備しておくと、取材陣にも来場者にも、そして自分にもやさしい一日になります。

この記事では、展示会・地域イベント・フェス・社内イベントなど、ふだんのイベントに取材を受け入れるときの段取りを整理します(記者を招いて発表する場そのものを作る話は、記者発表会の企画と当日設計で整理しています)。

結論:取材の受け入れは、(1)取材の申込を主催者の広報窓口に一本化し、来る媒体と人数を一覧にする、(2)プレス受付と腕章(またはパス)で、取材の人がひと目で分かるようにする、(3)「撮っていい場所・時間」と「撮らない場所」を図面に書き、取材陣に渡す、(4)取材陣が通る動線と、付き添う立ち会い役を決める、の4つで整います。全部を完璧にしなくて大丈夫です。まずは「窓口は誰か」「撮らない場所はどこか」の2つを、主催者さんと決めるところから始めましょう。

※取材の受け入れ可否や、どの媒体に何を話すかを決めるのは主催者(広報担当・PR会社)です。制作会社が担う範囲は案件ごとに異なります。本記事は、制作ディレクターが現場側で整えておくと助かる段取りの一例です。

何が起きているか——取材は「当日いきなり」現場に入ってくる

取材の準備が後回しになりやすいのには、理由があります。

その結果、当日の現場ではこんなことが起きやすくなります。

どれも、取材陣が悪いわけでも、制作側が手を抜いたわけでもありません。「誰が、どこで、どこまで」を決めていなかった、それだけです。だから、決めておけば防げます。

ステップ1:取材の申込を一本化し、来る媒体を一覧にする

最初にやることは、取材の窓口を主催者側の1人に決めてもらうことです。制作側が直接受けてしまうと、主催者が知らない取材が入ったり、話していい内容の確認が漏れたりします。

窓口が決まったら、来る媒体の情報を一覧にしてもらい、制作側にも共有してもらいます。

項目書くこと
媒体名テレビ局・新聞社・Webメディア・業界誌など
人数と役割記者・カメラマン・音声など(何人で来るか)
機材ビデオカメラ・三脚・照明・中継車の有無
来場予定時刻「10時ごろ」でもよい。分からなければ「未定」と書く
取材したい内容会場全体の様子、特定のブース、ステージ、主催者インタビューなど
連絡先当日つながる携帯番号

ここで聞いておきたいのが、車両と大きな機材です。中継車や撮影車で来るなら、どこに停めてもらうか、搬入車両の動線とぶつからないかを先に決めておきます(車両の動かし方は搬入出計画の記事と同じ考え方です)。三脚や照明を持ち込むなら、通路をふさがない置き場所も必要です。

当日いきなり来る取材(いわゆる飛び込み)もありえます。その場合も、まず窓口の人につなぐと決めておけば、現場で判断に迷いません。

ステップ2:プレス受付と腕章で「取材の人」をひと目で分かるようにする

取材の人は、一般受付とは別の場所で受け付けるのが基本です。小さなイベントなら、一般受付の端に「プレス受付」の机を1つ置くだけでも十分です(受付全体の作り方は受付・入場管理の記事で整理しています)。

プレス受付で用意しておくものは、次のとおりです。

腕章は、ただの目印ではありません。来場者から「あのカメラは何ですか」と聞かれたとき、スタッフが「取材の方です」と答えられる。スタッフ全員が、腕章の色と意味を知っていることが大切です。朝礼で一言伝えておきましょう。

ステップ3:「撮っていい場所・時間」と「撮らない場所」を図面に書く

取材陣がいちばん助かるのは、どこで何を撮っていいかが最初から分かることです。迷わせると、撮りたいものを探して会場中を歩き回ることになり、来場者にも現場にも負担がかかります。

会場図面に、次の3つを書き込みます。

イベント会場を真上から見た配置図。入口横の机、中央のステージ前の広い場所、奥の扉で仕切られた裏の部屋の3か所に、それぞれ短いラベルが付いている
プレス受付から取材エリアへ、撮影しない裏の場所には入らない。この3つを図面に書くだけで、取材陣が迷わず動ける。

時間についても決めておくと、当日がぐっと楽になります。

来場者の写り込みは、とくに気を配りたいところです。顔が大きく映るカットや、特定の人が主役になる撮り方は、一言声をかけてから撮ってもらうよう、撮影ルールの紙に書いておきます。子ども向けのイベントでは、なおさらです。入口の掲示や撮影NGの意思表示の仕組みは、個人情報と撮影同意の記事で整理しているので、取材のルールもそれにそろえると一貫します。

なお、ドローンでの空撮や、公道・公園など会場の外からの撮影を希望されたときは、会場の規定や別の許可が関わることがあります。その場で「いいですよ」と答えず、主催者と会場に確認してから返事をするようにしましょう。

ステップ4:取材陣の動線と、付き添う立ち会い役を決める

最後に、誰が取材陣に付き添うかを決めます。ここが決まっていないと、結局ディレクターが付いて回ることになり、本部が空いてしまいます。

取材が終わったら、どの媒体がいつごろ出す予定かを聞いて、窓口の人に伝えておきます。あとで主催者さんが掲載をチェックしたり、実施報告書に載せたりするときに役立ちます。

具体例:前日に決めた「2つ」で、当日がこう変わった

ある地域の物産フェアで、前日に「地元テレビ局と新聞社が来ます」と連絡が入ったケースを考えてみます(説明のための例です)。

前日の夕方、ディレクターは主催者さんと電話で2つだけ決めました。

  1. 窓口は主催者の広報担当さん。取材陣はまず本部横のテントに来てもらい、広報担当さんが付き添う
  2. 撮らない場所は、出店者の荷物置き場と救護テント。会場図面に赤ペンで印を付け、コピーを2枚用意する

当日の朝、取材陣は腕章を受け取り、図面とタイムテーブルを手に、広報担当さんと一緒に会場へ。正午のステージ前でにぎわいを撮り、主催者インタビューは来場者の流れから外れたのぼり旗の前で行いました。ディレクターは本部を離れず、インカムで「取材、ステージ前に入ります」「取材、終了です」を2回聞いただけでした。

前日の電話は15分ほど。それでも、当日に迷う場面はほとんどなくなりました。

影響——取材がスムーズだと、主催者の「次」につながる

取材の受け入れが整っていると、いいことがいくつも重なります。

取材は、主催者さんにとってイベントの成果を外に届けるチャンスです。その舞台を静かに整えるのも、制作ディレクターの大切な仕事のひとつです。

明日やること——いま動いている案件で、3つだけ確かめる

次に取材が入りそうな案件があれば、まずは次の3つだけやってみてください。

  1. 主催者さんに「取材の窓口はどなたですか」と聞く(決まっていなければ、決めてもらう)
  2. 会場図面に「撮らない場所」を赤で書き込む(バックヤード・控室・搬入口・救護所など)
  3. 配置表に「取材対応」の行を1行足す(名前が決まっていなくても、枠だけ作っておく)

どれも10分ほどでできます。取材の連絡が来てからでも間に合いますが、先に枠があると、前日の夕方に慌てずに済みます。

イベントのプレス・取材対応チェックリスト

項目は多めですが、全部を一度にやる必要はありません。忙しいときは「まずここだけ」の3つで十分です。

まずここだけ(この3つは必須)

余裕があれば確認

全部できなくても大丈夫です。「まずここだけ」の3つが決まっていれば、取材のカメラが入っても、現場はちゃんと回ります。

取材の連絡は、たいてい急に来ます。でも、それは主催者さんのイベントが外から注目されているという、うれしい知らせでもあります。窓口と、撮らない場所と、付き添う人。この3つさえ決めておけば、あとはいつもの現場で、いつもどおりに迎えれば大丈夫です。次の案件で、主催者さんにひとつ聞いてみるところから始めてみましょう。

にぎわうイベント会場のステージ前で、取材のカメラマンが撮影を終えて笑顔で会釈し、イベント制作ディレクターと主催者の広報担当がほっとした表情で見送っている
段取りが決まっていれば、取材のカメラも、いつもの現場の一部になる。

よければ、こちらも

取材の受け入れは、受付・配置・写真の扱い・報告とつながっています。前後をあわせて見ると、当日がもう少し組みやすくなります。

関連用語


本記事は、イベントに報道・メディアの取材を受け入れる際の一般的な実務ノウハウの整理です。記載した項目・時間・事例は説明のための例で、標準を示すものではありません。取材の受け入れ可否や対応方針は主催者(広報担当・PR会社)の判断によって異なります。撮影・空撮・会場外での撮影に関する取り扱いは、会場の利用規定・関係法令・所轄の判断にもとづいてご確認ください。