
イベント香盤表の作り方|当日を止めない進行台本チェックリスト
開演5分前。客席の照明が落ちはじめる頃に、ふと不安がよぎることはありませんか。
「次の転換、誰が舞台に出るんだっけ」「あの映像のきっかけ、照明さんと共有できてたかな」。 頭の中では分かっているのに、いざ本番になると確認したくなる——それは、あなたが雑だからではありません。当日は同時にいくつもの判断が重なるから、誰でもそうなります。
そんなときに静かに頼れるのが、よくできた香盤表です。この記事では、当日に迷わず動ける香盤表の列構成と、巻き/押しを吸収する組み方を、明日そのまま使えるかたちで一緒に整理していきます。
結論:香盤表は「時間・尺・項目・進行(誰が何をする)・きっかけ(音/照明/映像のキュー)・担当・備考」の列で組むと、当日の判断が速くなります。まず分単位で時間を切り、各セクションの最後に30秒〜数分のバッファを持たせておくと、巻き・押しが出ても全体が崩れにくくなります。最初から完璧を目指さず、骨組みを先に置いて、リハーサルで埋めていけば大丈夫です。
※香盤表の様式に決まりはありません。会場・座組み・案件規模で最適な列は変わります。本記事は一般的な組み方の一例として、自分の現場に合わせて足し引きしてください。
香盤表は、当日を止めないための共有言語です。あなたの頭の中にある段取りを、音響・照明・映像・舞台・受付の全員が同じ1枚で見られるようにする。それができていれば、本番でいちいち口頭で確認しなくても、現場は静かに回りはじめます。
まず、香盤表が「何のための紙」かをそろえる

香盤表(進行台本)は、台本でもあり、指示書でもあり、チェックリストでもあります。役割を1つに決めようとすると、かえって列が散らかります。
現場でいちばん効くのは、「誰が・いつ・何のきっかけで・何をするか」が1行で追えること。読む人は本番中、自分の列だけを上から下へなぞれば動けます。逆に言うと、自分の出番ときっかけが一目で見つからない香盤表は、どれだけ情報が詰まっていても当日は使われません。
だからまず、配る相手を思い浮かべてください。音響さんは音出しのきっかけが知りたい。照明さんは明かりが変わる瞬間が知りたい。司会は自分の喋り出しと尺が知りたい。その全員が、同じ1枚で自分の行を追える——そこを目指して列を決めていきます。
列構成:この7列を骨組みにする
香盤表に正解の様式はありませんが、迷ったら次の7列から始めると過不足が出にくいです。横長(A4横やA3)で組むと、1行が読みやすくなります。
- 時間(開始時刻):その項目が始まる時刻。本番は実時刻、リハは相対時間でも可。
- 尺(所要):その項目に何分かけるか。ここが積み上がって全体時間になります。
- 項目/シーン:「開演アナウンス」「主催挨拶」「第1部 トークセッション」など、何が起きるか。
- 進行(動き):登壇者の出ハケ、転換、司会の動き。「誰が舞台に出る/引っ込む」を具体的に。
- きっかけ(キュー):音響・照明・映像の合図。「SE①IN」「明転」「VTR-A 再生」など、担当が拾える言葉で。
- 担当:その行で動く人。インカムで呼ぶ相手が分かるように略称をそろえる。
- 備考:注意点・予備・連絡先など。雨天時の差し替えや、登壇者の導線メモもここへ。
きっかけの列は、音響・照明・映像でサブ列に分けるとさらに見やすくなります。規模が小さければ「きっかけ」1列にまとめて、頭に〔音〕〔照〕〔映〕の印をつけるだけでも十分です。最初から細かく割りすぎず、現場の人数に合わせて調整してください。
配信やハイブリッド開催が入る場合は、リアル進行の列はそのままに、配信オペレーションの行(または列)を1本足すと現場と配信が同じ1枚で動けます。スイッチング(カメラの切り替え)、テロップの出し入れ、配信開始/終了、収録・アーカイブの録画開始といったきっかけを、〔配〕の印をつけて香盤に載せておきます。オンライン登壇者がいるなら、その人の出ハケ(接続を待つ・画面に呼び込む・退出)も会場の登壇者と同じように進行列へ。配信は会場の音や照明とタイミングがずれると視聴者にだけ「間」が生まれるので、リアルのきっかけと並べて見える化しておくと、配信担当が自分の行を追って動けます。
時間は分単位で。各セクションの最後にバッファを置く

進行が押す(予定より遅れる)のは、段取りが悪いからではありません。挨拶が少し延びる、転換に手間取る、機材が一拍待つ——本番では小さな遅れが必ず積み重なります。だから、押すこと自体を前提に組みます。
おすすめは、各セクションの最後に30秒〜数分のバッファをあらかじめ書いておくことです。トークが延びても、次の幕間の余白で吸収できます。終演時刻から逆算して、バッファの合計が「全体で巻ける余地」になります。これが頭に入っていると、本番で「あと何分まで許容できるか」を即答できます。
時間は分単位で切るのが基本です。秒単位が要るのは、映像と音と照明がぴったり合う見せ場(オープニングやエンディング)だけ。そこは別途、秒単位の細かいキューシートを1枚足すと、本編の香盤表がすっきりします。全部を秒で書こうとすると、かえって本番で追えなくなります。
明日やること:骨組みを15分で置いてみる
完成版をいきなり作ろうとすると、手が止まります。明日まず手をつけるなら、この順番だけで十分です。
- 横長の表に、上の7列の見出しを置く。
- タイムテーブル(開演〜終演の大きな流れ)を、項目だけ先に縦に並べる。
- 各項目に「尺(仮)」を入れ、開始時刻を上から計算する。
- 各セクションの末尾に、バッファの行を1つずつ足す。
- 分かる範囲で「きっかけ」と「担当」を埋める。空欄はリハで埋める前提でOK。
ここまでで骨組みは立ちます。きっかけの精度は、リハーサルで実際に音や照明を出しながら詰めていきます。「リハで埋める欄」と割り切ると、企画段階で完璧を求めて消耗せずにすみます。
骨組みの草案づくりに、AIに進行台本や香盤表のたたき台を出させて時短する手もあります。タイムテーブルや項目を渡して「香盤の列に並べ直して」とお願いすると、空欄の多い下書きくらいはすぐ用意できます。ただし、きっかけや尺、安全に関わる動きは現場ごとに違うので、出てきたものは必ず人が一行ずつ確認して直す前提で。あくまで白紙から書き始める手間を省く道具、と考えておくと安心です。
なお、共有はクラウド(共同編集できるシートやドキュメント)を基準にしておくと、版が一本化されて「古い香盤が現場に混ざる」事故を防げます。リハで出た修正もその場で全員に反映できます。紙は当日のバックアップ——通信が落ちても手元で追えるよう、確定版を1部ずつ刷っておく、という位置づけにしておくと両取りできます。
香盤表チェックリスト(配る前に見る)
印刷して関係者に配る前、または共有データを確定する前に、ここだけ確認しておくと安心です。
- 全項目に開始時刻と尺が入っているか
- 各セクションの最後にバッファがあり、終演時刻から逆算が合っているか
- 「きっかけ」が、音響・照明・映像それぞれの担当が拾える言葉になっているか
- 登壇者の出ハケ(誰が出て・誰が引っ込む)が進行列に書かれているか
- 担当の略称が全員でそろっているか(同じ人を別表記していないか)
- 版(バージョン)と日付が紙に入っているか(古い版が現場に混ざらないように)
- 雨天・機材トラブルなど、差し替え/予備の動きが備考にあるか
- 最後の項目が、本番終了ではなく撤収・退館まで書かれているか
- リハーサルで実際に通して、押した箇所・詰まった箇所を反映したか
すべてを一度で満たせなくても大丈夫です。版を更新しながら、リハのたびに精度を上げていけば、当日には頼れる1枚になっています。
よければ、こちらも
香盤表は、進行管理の中心になる1枚です。ここが固まると、当日スタッフの配置表やインカムのコール、リハーサルの段取りも一気に組みやすくなります。これらは順に記事にしていきますので、合わせて整えていきましょう。
- イベント制作ノートについて:編集部の考え方

香盤表は、あなたの段取りを「全員で見られるかたち」に変える紙です。最初から完璧でなくて構いません。骨組みを置いて、リハで埋めて、当日は静かに頼る。その積み重ねで、本番はちゃんと回っていきます。
開演前にこの1枚を握っている時点で、あなたは当日を止めない準備を、もう始めています。