
イベント制作の課題管理表の作り方|宿題と決定事項を1枚で回す
本番まで、あと3週間。主催者との定例を終えて席に戻ると、チャットに「看板の校了って、誰が持ってましたっけ?」と協力会社から一言。先週の議事録を開き、その前の議事録を開き、主催者からのメールをさかのぼる。たしか「来週までに」と言った気がする。でも、誰が言ったのかが思い出せない。
宿題が、議事録とチャットとメールと、あなたの頭の中に散らばっている。そんな時期、ありませんか。
これは、あなたの記憶力や段取りのせいではありません。イベント制作は、関わる人と決めることの数が、本番に近づくほど一気に増える仕事です。頭の中で持てる量を、案件のほうが超えていく。だから、置き場所を外に1つ作ってあげる必要があるだけです。
この記事では、案件ごとの「課題管理表(宿題リスト)」と「決定事項ログ」の作り方と、定例の5分で回す運用を整理します。会議そのものの進め方は イベント制作会議の進め方 に、先方の確認待ちの扱いは クライアント確認待ちで止めない進行管理 にまとめています。ここでは、その会議と会議のあいだで、案件全体の宿題を持ち続ける台帳の話です。
結論:課題管理は、案件ごとに①宿題リスト(誰が・何を・いつまでに・いまどうなっているか)と②決定事項ログ(いつ・誰が・何を決めたか)の2枚を分けて持つと、ぐっと回りやすくなります。宿題は入口を1つにして、チャットやメールで来た依頼もその日のうちに1行足す。棚卸しは定例の冒頭5分で「期限切れ」と「今週期限」だけ読み上げる。本番が近づいたら、見る頻度を上げる。これだけで「誰が持ってましたっけ?」はほとんど起きなくなります。
※本記事は一般的な実務の整理です。列の構成や頻度は一例なので、案件の規模やチームのやり方に合わせて調整してください。
何が起きているのか:宿題が「4か所」に散らばっている
宿題が行方不明になるとき、たいてい置き場所が次の4つに分かれています。
- 議事録:定例ごとにファイルが増え、前回の宿題が今回の議事録に引き継がれない。
- チャット・メール:「これお願いできますか」「承知です」で終わり、どこにも記録されない。
- 個人のメモ:自分のノートには書いたけれど、チームからは見えない。
- 頭の中:「あとで返そう」と思ったまま、次の電話で上書きされる。
加えて、よくあるのが次のような書き方のゆれです。
- 担当が「制作」「先方」「チーム」になっていて、人の名前になっていない。
- 期限が「早めに」「来週中」で、日付になっていない。
- 「検討中のこと」と「もう決まったこと」が、同じ議事録の同じ段落にまざっている。
どれも、忙しいなかで自然に起きることです。そして、置き場所と書き方を決めるだけで、ほとんど防げます。
宿題リストと決定事項ログを「2枚に分ける」

まず、1つの表にすべてを入れようとしないことです。宿題と決定事項は、性質がちがいます。
| 宿題リスト | 決定事項ログ | |
|---|---|---|
| 何を書くか | これからやること | もう決まったこと |
| 行の一生 | 終われば「完了」にして閉じる | 消さずに積み上げる |
| 見るタイミング | 毎週の定例・本番前は毎日 | 迷ったとき・変更が出たとき・精算のとき |
| 守ってくれるもの | 抜け漏れ | 「言った・言わない」 |
宿題は終われば閉じていく「動くリスト」。決定事項は、あとから「いつ、誰が、何を決めたか」を確かめるための「記録」です。同じ表にまぜると、完了した宿題を消したときに、一緒に決定の経緯まで見えなくなってしまいます。
ツールは、チーム全員が開けるものなら何でも大丈夫です。共有のスプレッドシート(Googleスプレッドシートや Excel の共有ブック)で、シートを2つに分けるのがいちばん手軽です。社内でタスク管理ツールを使っているなら、それに乗せても構いません。大事なのは道具より、「この案件の宿題はここ」と全員が言える1か所であることです。
宿題リストの列は、この6つで十分
| 列 | 書くこと | 書き方のコツ |
|---|---|---|
| No | 通し番号 | 消さずに連番。「No.23の件」で話が通じる |
| 宿題 | 何をするか | 動詞で終える(例:「看板デザインの校了をもらう」) |
| 担当 | やる人 | 個人名で。主催者側の宿題も、先方のご担当者名で書く |
| 期限 | いつまでに | 日付で。「早めに」は書かない |
| 状態 | いまどうなっているか | 未着手/対応中/確認待ち/完了 の4つだけ |
| 影響先 | 遅れると何に響くか | 発注・印刷入稿・香盤・見積 など |
いちばん効くのは、最後の「影響先」です。同じ「期限切れ」でも、印刷入稿に響く宿題と、本番後の報告書に響く宿題では、急ぎ方がまったくちがいます。影響先が書いてあれば、定例で読み上げたときに「これは今日中に動かないと」が全員に伝わります。
期限の決め方に迷ったら、本番からではなく発注や入稿の締切から逆算します(→ イベント制作スケジュールの作り方|開催日から逆算する工程表の組み方)。
決定事項ログは、5つの列で
| 列 | 書くこと |
|---|---|
| 日付 | 決まった日 |
| 決定内容 | 何が決まったか(1行で、言い切りの形) |
| 決めた人 | 主催者側の誰が了承したか/社内で誰が判断したか |
| 経緯・根拠 | どの会議・どのメールで決まったか(リンクや日付) |
| 影響する資料 | 図面・香盤・見積・発注書など、直す必要があるもの |
「影響する資料」を書いておくと、決定のたびに直し忘れが減ります。たとえば「開場時刻を30分早める」と決まったら、香盤・タイムテーブル・スタッフのシフト・警備の配置・会場の利用時間が動くかもしれません。ログの1行が、そのまま「直すものリスト」になります。
あとから仕様が変わって追加費用が出るときも、このログが根拠になります(→ イベントの追加費用・仕様変更の精算|揉めない進め方と確認リスト)。
宿題の「入口」を1つにする
表を作っても、宿題が表に入ってこなければ、また散らばります。ここで決めておきたいのは、入口を1つにすることです。
- 会議で出た宿題:会議の最後に読み上げたものを、その日のうちに表へ移す。
- チャット・メールで来た依頼:「承知しました」と返したら、その場で表に1行足す。返信に「No.31で管理しますね」と添えると、相手も安心します。
- 電話や立ち話:メモした紙やスマホから、その日の終わりに表へ移す。
ポイントは、表に書くのは「その日のうち」と決めておくことです。完璧に書かなくて大丈夫。宿題名と担当だけ先に入れて、期限は翌朝埋める、くらいで十分です。1行あれば、あとで思い出せます。
定例の冒頭5分で、「2つだけ」読み上げる
宿題リストは、全部を毎回読む必要はありません。定例の冒頭で読むのは、次の2つだけです。
- 期限切れ:期限を過ぎて、まだ完了していないもの。
- 今週が期限:今週中に期限が来るもの。
読み上げたら、それぞれ「いつ終わりそうか」「何に詰まっているか」を担当者に一言ずつ聞きます。責めるためではなく、手を貸せるところを見つけるためです。詰まっている理由が「先方の確認待ち」なら、状態を「確認待ち」に変えて、聞き方やリマインドを一緒に考えます(→ クライアント確認待ちで止めない進行管理)。
最後に、その会議で新しく決まったことを決定事項ログに足して、5分は終わりです。
本番が近づいたら、見る頻度を上げる
案件の終盤ほど、宿題の数は増え、期限は短くなります。見る頻度も、それに合わせて上げていきます。目安はこのくらいです。
| 時期 | 見る頻度 | やること |
|---|---|---|
| 本番1か月前まで | 週1回(定例の冒頭) | 期限切れ・今週期限を読む |
| 本番2週間前〜 | 週2回 | 加えて、「影響先:発注・入稿」の行を優先して確認 |
| 本番の週 | 毎日夕方10分 | 翌日期限のものを全部読み、当日持ち越しになるものを決める |
本番の週に、どうしても終わらない宿題が出てくることもあります。そのときは「本番までにやらなくても運営できるか」で仕分けて、本番後に回せるものは堂々と回す。ぜんぶを本番前に終わらせようとしなくて大丈夫です。
具体例:社内表彰式の案件で、何が変わったか
ある制作ディレクターが、300名規模の社内表彰式を担当したときの話です(説明のための一例です)。
最初の2週間は、宿題を毎回の議事録に書いていました。3回目の定例のあと、トロフィーの名入れ内容の確認が誰の宿題だったのか分からなくなり、主催者・社内・協力会社のあいだで「そちらで確認済みかと」が往復。名入れの発注締切まで、残り3日になっていました。
そこで、共有スプレッドシートに「宿題」と「決定事項」の2シートを作り、それまでの議事録から宿題を全部移しました。出てきた宿題は42個。そのうち担当が人の名前になっていなかったものが11個、期限が日付になっていなかったものが15個ありました。
その日の定例で11個の担当を決め直し、以降は冒頭5分で「期限切れ・今週期限」だけを読むようにしたところ、定例が以前より短くなり、名入れも締切に間に合いました。本番の週には毎日夕方に10分だけ表を見て、当日朝に「誰の宿題でしたっけ」が出ることはなかったそうです。
特別なことは何もしていません。置き場所を1つにして、書き方をそろえただけです。
影響:表があると、本番前の夜が静かになる
課題管理表があることで変わるのは、抜け漏れが減ることだけではありません。
- 聞かれたときに、表を見れば答えられる:「あれどうなってますか」に、記憶をたどらずに答えられます。
- 自分の頭が空く:覚えておく仕事を表に渡すと、本当に考えるべき段取りや演出に頭を使えます。
- チームが自分で動ける:担当者が自分の行を見て動けるので、あなたが一人ずつ声をかけなくて済みます。
- 終わったあとも役に立つ:決定事項ログは、精算・実施報告・次回の引き継ぎの材料になります(→ イベントのナレッジ保管と引き継ぎ)。
いちばん大きいのは、本番前の夜に「何か忘れている気がする」と眠れなくなる時間が減ることかもしれません。表を開けば、残っているものが全部そこにある。それだけで、気持ちはずいぶん軽くなります。
明日やること:3ステップ
- いま動いている案件で、共有スプレッドシートに「宿題」と「決定事項」の2シートを作る(列は上の6列・5列をそのまま使ってOK)。
- 直近の議事録とチャットから、宿題を全部移す。担当が人の名前になっていないもの、期限が日付になっていないものに印をつける。
- 次の定例のアジェンダの一番上に、「宿題の確認(期限切れ・今週期限)5分」を1行足す。
最初から全部きれいに埋めなくて大丈夫です。明日は、散らばっている宿題を1か所に集めるところまでで十分です。
課題管理表チェックリスト
まずはここだけ。最低ライン(必須4)
- 案件ごとに、宿題リストと決定事項ログを分けて作ったか
- 宿題の担当は個人名、期限は日付で書いているか
- チャット・メールで受けた依頼も、その日のうちに表へ1行足しているか
- 定例の冒頭で「期限切れ」と「今週期限」を読み上げているか
余裕が出てきたら詰めたい残り:
- 宿題に影響先(発注・入稿・香盤など)を書き、急ぎ度が分かるようにしたか
- 状態は未着手/対応中/確認待ち/完了の4つにそろえたか
- 主催者側の宿題も、ご担当者名で表に載せているか
- 決定事項ログに決めた人と経緯(会議・メールの日付)を残しているか
- 決定のたびに、影響する資料(図面・香盤・見積など)を直したか確認しているか
- 本番2週間前から見る頻度を上げる予定を入れたか
- 本番の週に、本番後に回せる宿題を仕分けたか
- 表の場所(リンク)を、協力会社も含めた関係者に共有したか
全部そろわなくても大丈夫です。必須の4つが回っていれば、「誰が持ってましたっけ?」で探しものをする時間は、ぐっと減ります。
宿題を表に出すのは、あなたが全部を覚えておかなくていいようにするためです。覚えておく仕事は表に任せて、あなたは「次に何をするか」を考える人でいてください。案件が大きくなるほど、それがチームにとっていちばん助かる形です。まずは今日、散らばった宿題を1か所に集めてみましょう。

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- 案件のあとに残す:イベントのナレッジ保管と引き継ぎ
- 費目の合計をざっくり出す:イベント概算見積 計算機
関連用語
本記事はイベント制作における課題管理(宿題リスト・決定事項ログ)の作り方と運用についての一般的な実務ノウハウの整理です。列の構成・状態の区分・見る頻度・具体例の数字は説明のための一例で、標準の型を示すものではありません。案件の規模や社内のルール、主催者との取り決めに合わせて調整してください。